「悪かった。ホントに、ホントにすまなかった。せめて線香だけで――…」
「だから帰ってって言ってんじゃん!ママにママに触れないでよ!私のママ――…」
「…美咲!」
遮られた私の腕が違う温もりで繋がれた。
唇を噛みしめながら見つめる先は険しい顔をした翔だった。
「すみません。線香あげたら帰ってくれますか?」
そう言った翔を思わず私は見た。
「は?何言ってんの?」
あまりの驚きでそれ以上言葉なんて出なかった。
そんな私の腕を翔はさっきよりもグッと掴み力を強める。
「…失礼だが君は…」
「アンタになんか関係ないで――…」
「今、美咲と一緒に住んでます。…とりあえず今日は線香あげたら帰って頂けますか?」
「ちょっと待ってよ、翔!」
淡々と進めていく翔に私は顔を顰めて見上げる。
だけど、翔は何も言わずに玄関を開け、父親だと思いたくもない男を中に入れる。
「すまない」
そう言った男は頭を少し下げ、翔の後をついて居間に向かう。
そんなどうしようもない感情を抱えた私は深いため息をつき、ママの飾られた遺影の前で腰を下ろした。



