だけど、だけど…
その現実を受け止めたくはなかった。
だって、私には父親なんていないから。
「美恵が亡くなったと聞き線香をあげに来た。…それで今、美咲はどうしてるんだろうと思って」
「…は?」
心の底から素っ気なく出してしまった。
私はどうしてる…って何?
馬鹿馬鹿しくて笑える。
しかも、今更?
「許してもらえるなんて思ってな――…」
「何言ってんのアンタ…。今更、父親きどり?…許す?ふざけんじゃないよ」
多分、今の私は必至だった。
全ての現実を受け止められる事などなく、ただただ必死な感情でいっぱいだった。
「分かってる。勝手に出て行った事もすまないと思ってる」
「こっちは今までどんんだけ苦しんできたのか分かってんのかよ!アンタは私とママを捨てた」
「……」
「アンタの所為でママは必死で頑張ってた。朝、夜、関係なしにずっと働いてた。そんなママを必死で今まで見てきて…」
「……」
「私だって、私だって!」
どんだけ自分を犠牲にしてきたと思ってんだよ!!
その言葉なんて口には出さなかったけど、もう心の中は憎しみでいっぱいだった。
「…すまない」
「今更父親だなんて言われてどうしろって言うの?私には父親なんて居ない。…帰ってよ」
指に光る指輪が憎くてたまらない。
…新しい家庭があるのなら、そっちに帰んなよ。



