「何で私に?」


続ける言葉に翔は冷蔵庫からビールを取り出す。


「ただの世話好き」


そう言った翔はプルタブを開けてビールを喉に流し込む。


「世話好き?」

「そーそー。甘いもの食いたいからって行ったらしい」

「へぇー…でもいいのかな貰って」

「つか今からもう返せねぇだろ」

「そうだけど…。ありがとうって言っといてね」

「あぁ」

「ところでご飯どうする?」

「あんま減ってねぇからいらね」

「そう。じゃあ、私もいいや」

「は?食えよ。何か作ろうか?」


換気扇をつけた翔はタバコに火を点けて私を見る。


「いらない。ケーキでいい」

「それ夕飯?」

「私もあんま減ってないけどケーキは食べれそう」

「何だそれ」


クスクス笑う翔に私も笑い、お皿に生クリームと色とりどりのフルーツが乗っかったケーキを置く。

そのケーキを美味しそうに頬張る私を翔は笑って見てた。


こんな些細な事でさえ、今は嬉しかった。

悩んで抱えてる気持ちが大きくても翔と居れるだけで幸せだった。


ママが教えてくれた、“今”を大切にしようと思った。



“今”を幸せだと思う事。

ホントにこの時はそう思ったんだ。