「私…一人で行けるけど」

「そんな調子で帰ったら迷子になんだろうが」

「え、迷子?私そこまで子供じゃない!」

「俺より年下なんだからガキだろーが」

「はっ?何それ」


たった一個じゃん!

でも、これが昔っから変わってない諒ちゃんの些細な優しさ。


「行くぞ」


そう言った諒ちゃんは私に視線を送り玄関に向かう。

思わずため息をついてしまった私は諒ちゃんに従う様に足を進めた。


もうすぐ19時を過ぎる。

翔…帰ってんのかな。


助手席に乗った私は車が発進されると同時に深くシートに背をつけた。

でも、これで良かったのかも知れない。

いつも帰る途中は考え事ばかりで、頭の中は真っ白。

どのルートで帰った事すら覚えてない日があった。


だから今日は諒ちゃんの些細な優しさに感謝。


「ねぇ…」


暫くして窓から見える景色を見ながら私は小さく呟く。


「うん?」

「あまりこう言う事、翔には言わないでね」

「こう言う事って?」

「別に落ち込んでるとかそう言うんじゃないけど…、まぁそう言うの」


泣いてるとか、翔には何も見せないとか…そんなの。

そう言うのって、やっぱ言われたくない。