線香に火を点け、手を合わしている諒ちゃんは何を語っているんだろう。

こんな光景を見るのも夢の様で、誰かが座る度に現実を受け止められなくなる。


「…お前、身体大丈夫か?」


視線を落としたと同時に聞こえた声に、再び視線を上げる。


「…え?」


合わせていた手をそっと話した諒ちゃんは、ママの遺影を見たままでこっちを向こうとはしない。


「ごめん、葵から聞いた」

「あ…」


多分、流産の事。


「美咲のお袋がそう言ってきて、俺知らなかったから葵に聞いたらそう言うから」

「あー…うん」

「もう、大丈夫か?」

「…うん。って言うか、私の心配なんかしなくていーってば!諒ちゃんは葵と香恋ちゃんの事だけ思っとけばいいの!」


ちょっと強気で言ったその言葉に諒ちゃんはフッと鼻で笑った。


「はいはい、そーですね。つか、その口調は変わってねぇな」


笑いながら振り返った諒ちゃんは立ち上がる。


「つか、その言葉は余計だから」

「お前もだろうが。…さて、帰るわ」


そう言った諒ちゃんは玄関に向かって歩いてく。