ひとしきり泣いてしまった私は気持ちを切り替えようと、暗闇になった部屋に灯りを灯した。
洗面所に行って、赤くなった目を洗い流しさっぱりとした。
こうやって、ここに居る今…
翔と居る事がどれだけの私の救いだったんだろうって改めて思う。
翔が居なければ、一人ぼっちだったかも知れない。
そうなってると、私はどうしてたんだろうって…
そう思う。
暫くしてピンポーンと鳴るチャイムに何故かドキっとした。
ママが居なくなった今、来る人なんていないだろうと思った。
出ない私をまるで急かすように鳴るチャイム。
玄関の方に視線を送って、ゆっくりと私は足を進ませた。
「おぉ…美咲」
ガチャっと開けて飛び込んで来た顔に思わず目を見開く。
「り、諒ちゃん?どうしたの?」
私服姿の諒ちゃんはフッと柔らかい笑みを向けた。
「仕事の用事でちょっと出掛けてて、その帰りにお前んち通ったら電気点いてたから」
「あー…そうなんだ。上がって?」
「おぅ」
「葵は?大丈夫?」
「あいつ今、実家帰ってる」
「えっ?何?もしかして別居中?」
「…んな訳ねぇじゃん。俺の仕事が最近忙しいから帰ってるだけ」
「あ、そうなんだ」
「何だお前。そのガッカリした顔はよ!」
「別にー…」
ハハっと笑う私に諒ちゃんは椅子に腰を下ろしてタバコを咥えた。



