「死んだら産まれた時と逆ってな」
「逆?」
「あなたが産まれた時、あなたは泣いて周りの人は笑ってる。だから死ぬ時は周りが泣くからその分、あなたが笑っているようになれって。そんな人生を空の上でしろってな」
「じゃあ、みんな笑ってんのかな…」
「そうだといいけどね」
…産まれた時は自分が泣いて周りが笑う。
…死ぬ時は周りが泣くからその分自分が笑う。
いい言葉だね。
じゃあ、ママは笑ってる?
翔のお母さんも笑ってる?
一条くんの彼女さんも笑ってますか?
「…一条くんは凄いね」
「は?俺が?」
「うん。何かしらの試練があっても頑張ってるから」
親が居なくて施設で育ったって言う割に、ちゃんとしてるし頑張ってる。
そんな姿が凄いと思う。
「それって俺だけに言う言葉じゃねぇじゃん」
「え?」
「美咲ちゃんだってそうだったんじゃねぇの?美咲ちゃんの彼氏だって何かあったからあんなに頑張ってたんだろ?だからすげぇ尊敬する」
「……」
「里桜香だって必死だし、みんな苦しみ方が違うだけで頑張ってる」
「そーだね…」
「だから俺は振り返らずに前進するのみ。そりゃあ…ちょっと学校はサボリ魔かもしんねぇけど、ちゃんと聞いてるから」
そう言った一条くんはニコっと微笑んだ。



