「あ、ありがと」
「貸して、線香」
言われた通りに渡すと、一条くんは数本の線香に火を点けてくれた。
「ありがと」
「はいよ」
受け取った私は線香置き場にそっと置く。
少し柔らかに吹く風が花びらを揺らし、線香の煙を頭上へと向かわす。
“こんにちは”って、そう言った私に、“こんにちは”って返ってきそうな気がした。
「…死んだらどうなるんだろうね」
ポツリとそう口を開いてく私は、ゆっくりと大空を見上げた。
11月の終わりに近づくと風も冷たく、ひんやりする。
見上げた空は透き通った水色。
ゆっくり流れてく雲が今、生きてる証だって教えてくれてるみたい。
「星になんの」
そう言った一条くんも同じく空を見上げた。
「それ、よく聞く話だね。ほんとかな…」
「さぁ…分かんねぇけど。でも掟ってもんがあるらしい」
「…掟?」
空から一条くんに視線を向けると、一条くんは同じく私を見た。



