「イケメンって…それ一条くんに言われたくないわ」
「だってホントの事じゃん」
「自分だってイケメンなくせして。今まで言わなかったけど私、勘違いされてんだから」
「…勘違い?」
「そう。全日制の子に“付き合ってるんですか?”なんて言われたんだから」
そう言って、私は困った様に頬を膨らませる。
「ハハっ、で、もちろん否定した?」
「もちろんって言うか、当たり前でしょ?一応、生徒と教師なんだから。じゃなきゃクビでしょ」
「まぁ、そうだな。つか年近いのに変な感じ」
「まーね…」
一条くんとの年の差なんてたった4つ。
私が上なのに何でこうも一条くんは大人びてるんだろう。
…不思議。
花を供えた後、ビニール袋に入っている線香を取り出した瞬間、「あっ!!」と思わず私は声を上げた。
「うん?何?」
「火、持ってない」
顔を顰めた私は何度もビニール袋を覗き込む。
「は?線香持って来てんのに火忘れたって、どんだけ馬鹿なんだよ」
一条くんは呆れた顔で苦笑いをする。
「仕方ないじゃん。忘れたんだから」
「はいよ」
そう言った一条くんはポケットからライターを取り出しカチッと火を点けた。



