「はい、終わり」
数回高い高いをした後、翔は香恋ちゃんを地面に下ろす。
香恋ちゃんはもっとしてほしかったのか顔を顰めて翔に抱きつくかの様に腕を伸ばした。
「香恋。もうダメ!翔くん仕事だから」
葵に言われた香恋ちゃんは今度は泣きそうな顔をする。
「また今度してやっからな」
香恋ちゃんの頭をクシャっと撫でた翔はそのまま私に視線を向ける。
「じゃあ、行くわ」
「え、あ…うん。…行ってらっしゃい」
「おぅ」
「あれ?翔くん、上がってけば?」
今から車に乗り込もうとする翔に、ママは首を傾げながら玄関先に指差す。
「あー…今から仕事なんっすよ」
「えっ、そうなの?」
「はい。すみません…」
「ゴメンなさいね。…わざわざ美咲を迎えに行ってくれて」
「いえ、また来ます」
車に身を潜めた翔に私は手を振る。
その変わりに翔はクラクションを鳴らし、発進させた。
「なんかでもビックリ。葵がママだなんて」
翔の車が見えなくなってすぐ、私は香恋ちゃんの頭を軽く撫でる。
「私もビックリ」
そう言った葵は照れ笑いをした。



