「…ごめん、なんか…」
「何で美咲ちゃんが謝ってんの?」
一条くんはフッと笑みを漏らし首を傾げる。
「いや、なんか思い出させる様な事聞いて」
「思い出させるも何も、忘れてねぇし」
「あ、…そっか」
「で、それからもう一度学校行こうって思ったわけ」
「そう…なんだ」
「あれからもう3年は経つのに忘れられねぇんだよな。…って言ってもまだ3年か」
「……」
…好きな人はいるかな。
そう言ってた一条くんはまだ彼女を想ってる。
“奏斗はね、年上が好きなの”
そう言ってた天野さんの言葉が漸く分かった気がした。
でも、忘れる事なんて出来ないよ。
…いつまで経っても心に存在してる。
「…美咲ちゃんの大切な人って?」
不意に聞こえた声に視線を向けると、一条くんは首を傾げてた。
「あ、あぁ…。彼の…お母さん」
そう言って私は手に持っていた花束をそっと供えた。
「あー…あのイケメン彼氏?」
一条くんはクッと口角を上げる。



