「…そうかな」
「大切な人が亡くなって泣かない人なんて居ねぇよ」
「…一条くんは?」
気になった。
一条くんの目の前のお墓。
そっと視線を送る私に一条くんは小さく息を吐き捨てた。
「昔付き合ってた女」
「かの…女?」
「そう。俺が…死なせた」
「…っ、」
言葉なんて見つからなかった。
ドクンと波打った心臓がやけに熱くなった。
死なせたって、どういう事?
「俺、親いねぇからまともな人生歩んでねぇんだよ。遊んでばかりで高校も1年の途中ですぐ辞めて…そん時に出会ったのがコイツ」
「……」
「3つ上だった。美容師の勉強しててあの頃の俺から見ると遥かに大人だった」
「…美容師?」
「そう。コイツのさ親、経営してんの」
「そうなんだ…」
「働く所がねぇって言った俺に女が紹介してくれた。初めは、俺が美容師?ふざけんなよって思ったけど、今では本職になりそう」
そう言った一条くんは悲しく笑った。
「…彼女は何で?」
…亡くなったの?
「たまたま俺の遅刻で場所を変更したのがきっかけ。間に会わねぇからって言った俺に、近場で待ってるって…その途中で事故にあった」
「……」
「即死だった」
そう悲しくも…情けなく口を開く一条くんに、
私の瞳が潤んだ。



