一条くんが姿を消して後、私は歩きながら頭を悩ませた。

ここ最近、頭を使う事が多い。


どうだっていいって思ってた人の事が気になって仕方がない。


年齢を重ねた所為か、それとも向き合おうと思ってんのか、それは分かんないけど、とにかく頭を使う。

マンションに着いてからドアをガチャッと開けた瞬間、思わずため息が出た。


「おかえり」


そういつも出向かえてくれるのは翔。

風呂から上がったばかりなのかシャンプーの香りがほのかに匂った。


「ただいま」


ニコっと笑う私に同じく翔も微笑んだ。


「体調、大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ」

「で、病院でなんて?」

「うん。まだ周期が早すぎて赤ちゃんの確認が分かんないみたい」


そう言って私は鞄を椅子に置き、冷蔵庫に向かう。


「そう…」

「で、来週の時は分かるからまた来週来て下さいだって」


冷蔵庫から水を取り出した私は鞄の中に入ってるエコー写真を取り出す。


「何これ」


受け取った翔はジックリと見つめて首を傾げた。


「ここが袋だって」


小さな小さな空間。

いまから大きくなっていくであろう小さな袋を指差す。