ボーっとつっ立って見ているあたしの方向に一瞬、天野さんが振り向いた。
少し笑った表情で振り向いた天野さん。
だけど、あたしの存在に気付いた天野さんは笑みをスッと消し、何もなかったかのように顔を背けた。
見てはいけないものを見てしまったんだろうか。
あの頃と逆の立場で全くどうしたらいいのか分かんなくて、暫くあたしはその場に立ち尽くしてた。
「…美咲ちゃんっ!!」
不意に弾けた声。
肩をバンっと押されるその感覚にあたしの身体がいっきに飛び跳ねた。
振り向く先に見えたのは笑顔の一条くん。
「あ…何してんの?」
「何って美咲ちゃんこそ」
「あたしは…買い物」
「へー…暫く動いてなかったじゃん」
「見てたの?」
…もしかして天野さんの存在も知ってたの?
「あそこのカフェから」
一条くんが指差す方向を見ると、オープンカフェ。
店の外にもテーブルがズラリと並んで、若者達が楽しそうにハシャイでる。
「あー…そうなんだ。一人?」
「ううん。ツレと一緒」
「へー…」
「つか、何?その反応。何かあった?」
「あー…さっきね、そこで…」
天野さんが。
って、思わず口に出しそうになった。