「…美咲?」
どれくらい経ったのだろうか。
不意に聞こえたその声に、私は伏せていた顔を上げる。
目の先に居るのは葵で、そんな葵は悲しそうな瞳であたしを見た。
「あ…葵…」
そう小さく呟いて乱れた髪を整える。
「だい…丈夫?」
コンビニの袋を手にしてる葵はテーブルに置き、あたしの顔を覗き込む。
「あぁ…うん。…香恋ちゃんは?」
「諒也のママに見てもらってる」
「…そっか」
「芹沢さんから聞いた。美咲…ごめん」
そう言った葵は申し訳なさそうにする。
理由を言われてないけど、きっと5年間のママの病気の事なんだって、すぐに分かった。
「ママは…知ってたのかな」
頭を抱えて俯く私は、ゆっくりと目を閉じる。
「芹沢さんも、私も諒也もだけど、美咲のママが病院に行ってるってずっと思ってた」
「……」
「美咲が旅立ってから仕事ばかりしててさ、一時は止めたんだけど…美咲のママ頑張りやだから“大丈夫”って言って、毎日頑張ってた」
「……」
「それが大きな負担だったのかも…」
「……」
「ごめんね、ごめんね。気づかなくてごめんね…」
涙声でそう言った葵。
閉じていた目を開けると、赤く目を腫らした葵が手で拭ってた。



