「あれ?新山さんですよね?」
「はい」
「娘さんですよね?」
「そうですけど。あ、私留学してて帰って来たばかりで何も知らないんですが」
「あー…そうなんですか」
「で、5年前に手術をしたってホントですか?」
「はい。そうですね。担当医の医師はもうこの病棟にはいないので分からないのですが、ここにそう書いてあります」
「あの…で、今はそれに関係があるのですか?」
グッと息を飲み込んだ。
「再発してます」
「え?…再発って」
「癌が新しく再発してます。カナリ危険な状況です」
「ちょ、ちょっと待って下さいよ!!ママは元気でした。ここ数日もずっと元気でした!!なのに、そんな事ないでしょ?」
思わず医師の服を掴んでしまった。
掴んで見上げて、必死で言葉を出した。
でも医師は全然いい顔なんてしなかった。
「見えない部分で悪化していたんだと思われます」
それを私は見つけてあげられなかったって事?
「あの…助かるんでしょうか?」
それだけだった。
聞くのはもうそれだけだった。
「再発がカナリ進んでまして。今の科学的では完全復活する医療も――…」
「違うの。そうじゃないの!私は助かるのかって聞いてるんです!」
そう荒ただしく声を上げた私に医師は真剣な目で私を身構えた。
「助かる見込みは極めて少ないと思います」
…極めて少ない…
え?何言ってんの、この人?
冗談じゃないよ、私まだ24だよ?
またこれから新しく出発しようとしてんだよ?
なのに死ぬような事言わないでよ…



