「ご家族の方はここで待っててください」


病院に着くなり看護師さんはそう言ってタンカに乗っているママを連れて別室へと入った。

ソファーに座る私の隣で、翔は深く背をつけて俯いている。

そんな時間が刻々と過ぎ、


「ごめん、ちょっと」


ポケットからタバコを取り出した翔にコクンと頷いた。

翔が姿を消した後、深いため息を吐き出してしまった。


「…新山さん?」


ガチャと微かに響く音と聞こえてきた声に頭を上げる。

カルテを見ながら出てくる医師に私はスッと立ち上がった。


「どう…ですか?」

「うーん…」


顔を顰めた医師はそう言って今までのカルテにずっと目を通してた。


「一言で言えば危険な状態です」

「…危険?」

「5年前に一度手術をされてますね。…癌の」

「…はい?」

「5年前に手術です」

「あの…すみません。状況がいまいち掴めないんですけど」


…5年前に手術?

…癌?

何それ、知らない。