怖くなって、怖くなって、私が行動に起こしたのは数分後。
リビングに行ってテーブルに置いてある鞄を全部、ひっくり返して床にぶちまけた。
バラバラと落ちて行く私物。
床に落ちたその私物を両手で掻き荒らして、その中からスマホを掴んだ。
何も思わずに咄嗟だった。
耳に当てるコールが全然はっきと聞こえなくて、頭さえもボーっとする。
「…美咲?」
コールの音が切れたのは少し経ってから。
聞こえるのは紛れもなく翔の声。
「ママが…ママが…」
そう言うだけで、いっぱいいっぱいだった。
「お母さんがどうした?」
「……」
「美咲?」
「帰って来たらママが血を吐いてて動かないの…」
自分でも分かるくらいに声が震えてた。
そんな震えた声で翔に伝わったかどうかわかんなかったけど、
「すぐ行く。とりあえず救急車呼べ」
焦ったようにそう言った翔の声だけははっきりと聞こえた。



