エンは森の中をさまよっていた。
エンは不変なので、移ろいゆくコウとは相いれなかった。
何度も、何度も光を失ったコウと別れ、また新たな光を宿した違うコウと出会う。
変わりゆくコウとは違い、エンの闇は変わらない。
置いて行かれ、すがられ、また探しだし、出会う。
コウがいるからエンは孤独を癒すことができ、しかしコウがいるからこそエンは一人変わらずにいる孤独から逃れられなかった。
コウは強すぎる力に自らを焼き、その光が消えるまで苦痛から逃れられない。
それでも、闇を持つエンが触れるほどそばにいることで、コウはその苦しみから逃れることができた。
光の強さは闇の優しさに惹かれ、暗闇の孤独は光の暖かさを忘れることはできず……
だから2人は何度別れ、出会ってもお互いから離れることはできなかった。
「少し、尋ねたいのだが」
エンは道の向いから歩いてきた狩人に声をかけた。
「なんだ?兄ちゃん」
「このあたりに光、もしくは太陽を象徴するもの、人物がいないか?」
「光?……うーん」
狩人は考えこむように顎に手を当てた。
「あ、ああそうだ。たしかこの道をまっすぐ行ったところの川を上ると、太陽の塔を祀る村があると聞いたことがあるな。数年前まではそうでもなかったんだが、閉鎖的な村でな、俺たちみたいな外の人間が近づくと射殺されちまう。兄ちゃん興味あんのか?やめとけやめとけ。興味だけで命を落とすなんて無鉄砲もいいところだぞ」
ふっとエンは自嘲気味に笑った。
どうしたって死なない自分が恨めしいのに。
コウも自分も死ねば、この世界は崩れるだろうが、自分たちの苦痛は終わるのだ。
「情報感謝する。死ぬかどうかは、自分で決めるがな」
エンは金貨を一枚狩人に向かって弾いた。
狩人が金貨に驚き、本物であることを確認して、慌ててエンを呼び止めようとしたが、既にエンの姿は闇にまぎれて消えていた。