エンが目をさましたとき、腕に絡み付いている物の存在を一番に感じた。
しかしエンは何でもないことのようにそれを無視して、むくりと緩慢な動作で起き上った。
漆黒の長い髪が、対照の磁器のような真っ白な肌の上に流れるのをぼんやりと見つめた。
対極のようで実は似ている黒と白。
あまりに白いその肌は見た目に質感や現実味がなく、なんの生命も感じない無機質な白さだった。
実に、実に闇にふさわしい色合い。
エンはそれが嫌いで、だから自分のことにあまり興味を持ったことがなかった。
上着を羽織り、ベッドから出ようとすると、暖かな手がエンをとどめた。
「どこに行くの……」
寝ぼけたような瞳がエンを見つめる。
「エンがいないと、ボクは眠れない」
「もう朝だ、コウ」
エンはコウの暖かな手をつかむとひっぱり起こした。
コウはエンに寄り掛かるようにして、しばらくその心地よさを感じるように瞳を閉じた。
エンは光をまとうコウの白とも淡い黄金色ともつかない、短く柔らかい髪をじっと見つめ、
「ん……」
コウがまた眠ろうとする気配を感じとって、コウを引き離した。
コウは目をこすりながら、エンに微笑んだ。
「おはよう、エン」
「ああ……おはよう」
あまりに違い、お互い交わることはない。
それでも二人、お互いがいないと生きてはいけない。
光と闇に縛られた二人の精霊種は、今日もお互いの一番近くで背中合わせに生きている。