目の前に立つのは、初めて見る女の子。
そうだな…田岡の言う様に確かに美人だな。
野中って子が俺を見てニコッと笑った。
“ニコッ”という同じ括(くく)りでも、桜の笑顔とは全然違うんだな。
俺の心臓は冷静な動きのままだった。
「ねぇ、大石くんって最近女子の注目の的なんだよ。知ってた?」
「注目?どうして?」
「夏休み明けて久しぶりに見たら、ものすごく背が伸びてかっこ良くなってるってみんな騒いでるー」
「…そりゃどうも…」
「ねぇ、彼女とかいるの?」
野中がじりじり近付いて来る。
「いや、いないけど……」
思わず後退(あとずさ)りする。
「じゃぁ!あたしと付き合おうよ!」
「……」
確かに美人かもしれないけれど、こいつと付き合う自分なんて想像出来ない。
これから先も、こいつのことは好きにはなれないって確信に近いものを感じるんだ。
理由なんてないけど…


