「何も無くても……何も無くても、女の人が柳瀬の家に入るなんて……二人きりになるなんてあたし……嫌だよ……」



今にも消えそうなくらい、弱々しい声でそう言った。


今までの自分では考えられないほどの、“独占欲”

もう、誰にもとられたくないという思いばかりが溢れだしてくる。



「ごめん……」



柳瀬はそう呟いて、あたしを優しく包むように抱きしめた。




あたしは、何をやってるんだろう。

今は柳瀬の方が頭がぐちゃぐちゃで、混乱してるに決まってるっていうのに。


なんで、困らせちゃってるんだろう。


馬鹿だな、あたし。


こんな事言うために柳瀬の部屋に来たんじゃないのに。



「ねぇ。もう一度、お母さんとやり直す事は考えてないの……?」



あたしが言いたかった事は、これで。



「お母さんと、もう一度……」




あたしがそう言うと、柳瀬はあたしを抱きしめるのをやめ、

息を吐いてから、



「やり直せる自信が……無いんだ」



そう小さい声で呟いた。