素直じゃないあたしを温めて


「ごめん、呼び出したりして」



柳瀬はベンチに座って優しくそう言った。
さっきの冷たい瞳はもう無くなっていた。


家に帰り、一人でぼーっとしていたら、
柳瀬から電話が掛かってきて、会いたいと言われ、今ここに居る。



此処は、柳瀬にキャバクラのバイトが見つかり、

説教されたり、あたしの家庭内の事情
を話をしたり場所。


そんな事もあったなぁって懐かしくなる。



柳瀬ともあの日から、関わるようになって……


あのときは、まさかあたし達の関係が
恋人になるだなんて思っても居なかった。



「さっきはごめんな」


「うん……あたしこそ、ごめん」



あたしも柳瀬の隣に座り、息をすーっと吐いた。



「ちょっとまだ、何て言うか……気持ちの整理が出来てなくて……茂里に当たって悪かった」


「うん……」



人通りの少ないこの場所で、
何も無い静かな時間が流れる。


“悪かった”



そう言ったっきり、柳瀬はもう何も言わなかった。