「……」
あたしは追いかける事も出来ず、
ただその場にぼーっと立つことしか出来なかった。
静まり返っていた店の中はまたザワザワし始め、
皆はあたしの顔をチラチラと見ていた。
「お姉ちゃん!」
美砂があたし所に走ってきて、「大丈夫?」
と声を掛けてくれた。
「……」
「お姉ちゃん……?涙……」
「……へ?」
あたしは美砂に言われて自分の頬に触れてみると、涙で濡れていた。
美砂に言われるまで自分では気づかなかった。
あたしが今、泣いているのだという事を。
何に対して、泣いているのだろう。
柳瀬があたしに冷たい態度を取ったから?
柳瀬が先に帰っちゃったから?
……違う。
きっと、自分に話してくれない事があるのだと思うと、寂しかったんだ。

