「それ……何だったの?」



きっと、それは聞いちゃ駄目なんだろう。

でも……それじゃあたしが気になる。


どうして、何が、
柳瀬をそんな表情にさせるのか。



「……何でもない」


「何でもない事無いでしょ!だって柳瀬がそんなか──」


「何でもねぇって言ってんだろ!」


「……え?」




いきなり怒鳴った柳瀬にあたしは肩をビクッとさせ、

周りの皆も柳瀬の怒鳴り声が聞こえたのか、店内は静まっていた。




「やな……せ……?」


「ごめん、ちょっともう俺帰るわ」



柳瀬はそう言うと店の出口に向かって行った。



「待って……!」


「ごめん……後で電話するから」



振り向かないでそう言った柳瀬の背中が、ひどく冷たいような感じがした。