「「はあぁ……」」

自分の溜め息に混じり、相手の溜め息が聞こえた。

「どうした?また何かあった?」

心配して聞いてみる。
しかし、あっさり。

「翠こそ、溜め息なんて珍しいね…?」

なんて心配で返された。

「……あー…。
そういや、七虹、草津竜って知ってるよな?」

「ん?うん。同じクラスだよ?
草津くん…どうかしたの?」

「いや、あいつ、アタシの幼なじみでさ。」

「へぇ…!!初耳~」

驚いた顔をした七虹。
大袈裟だ、と笑うと、今度はコロッと、
怒った顔に早変わり。

「…で?その草津くんがどうしたの?」

言葉に詰まる。

(アタシ…何を言うつもりだったっけ?)

「あー…いや。
イイ奴だからさ、仲良くしてやって。」

「ホント……!!
ちょっと怖そうだったから、席近いけど、話した事なかったんだぁ。
ちょっと安心。」

えへへ、なんて笑う七虹に、
つられるように、アタシも笑った。

「翠にしか、惚れらんねぇ」

昨日、電話越しに聞いた竜の声が
頭で何度もリピートされる。
昨日からずっと、だ。

竜にだって、彼女くらいいるはずなのに、
アタシの気持ちをからかうような事を…。

竜に特別な感情が芽生えたのは、
つい最近。

中学3年のころ、体育大会の時のクラス対抗リレーで、アタシ達のクラスは最下位に終わった。
スタート直後はぶっち切りで1位だったのに。

敗因は、アタシにある。