私にはおよそ友達と呼べる
存在がなかった




小さい頃から私は
“氏原家の一人娘”
として育てられてきた




誰も“桜”として私を
見てくれる人はいなくて


私自身ではなく“氏原”
という名前が私の本体
みたいなものだった




そんな異様な環境が嫌で


でも幼い私にはどうする
事もできなくて



この頃から私は虚勢を張る
ようになっていたように思う