‐彼と彼女の恋物語‐




敬+小音



「デートしよっか」



朝起きて一言め、ベッドのなかで緩やかな温もりに再びの睡眠に瞼の重みに従順なその時だった。彼が言ったのは。



「………デート?」

「そ、デート」



思考回路が追いつかない寝起きの頭脳は何も働いてくれず、そうですか。なんて返事で終わる。


彼は優しく微笑んでドライブする?海とか?なんて囁いてくるもんだから、もう一度寝ようと思っても阻止される。



「あ、遊園地とかはダメ。転んだりしたら危ないし、アトラクションなんか乗ったら家から出さない」

「え、あ、はい。」



なんで急にこんな展開になっているんだろう。真剣な顔して、走ったりしたら首輪するわ。なんて言ってる彼。


結局、何かを考える前に彼が言い出したら何を言っても無駄なことを理解している彼女は、デートのプランを大人しく聞いているのだ。


結局、妊娠中の彼女のことを考慮して近くの映画館へ足を運ぶことに決定した。



ーーーーーー数時間後。


「この映画、ミュージカルなんだって」

「調べたんですか?」

「さっきね。きっとお腹の子にもいいと思うよ」

「……ありがとうございます」

「体調悪くなったりしたら言ってね」



上映まであとちょっと。いつもとは違う場所で、だけど同じ彼は変わらず心配性を発揮している。




「大丈夫です。映画は久しぶりで楽しみなんです」

「そっか、そうだよね。ごめん」

「……そういうつもりじゃないです」

「いや、うん。でもさ、これ実は初デートだよ」

「………(気がつかなかった…!)」

「家か病院かスーパーだけだったよね」

「そういえば…気にしてなかったです」

「この子が産まれるまで、たくさんデートしよ」

「………そうですね、好きです」

「やばいね、今来るか、家帰りたい」

「支離滅裂ですね」

「好き、愛してる」



初デートは、映画。

ちなみに、この日から毎週かならずどこかにデートしに行くことを約束し、彼と彼女は残り少ない恋人気分をたくさん味わうのだった。