□ □ □ 「えぇ、あんたあんな山も登れなかったのかい」 祖母は茶碗を片手に、皺だらけの顔を緩ませてそう言った。 「うん。休憩してたら時間が無くなったんだ」 「全く、あんたは本当に貧弱だねぇ。あの山はここいらで一番緩い山じゃないかい」 「いい山だとは思うよ。木陰が大きくて、涼しい。」 目の前にご飯が置かれる。 祖母特製の肉じゃがと、味噌汁。 空腹を誘ういい匂いに、お腹が鳴った。 「いただきます」 「おお、ようさん食べろよ」 祖母は優しく、笑いかけてくれた。