触角、複眼、銀色の表皮。

その異形の顔は、水面に映るものではなく水中から覗き込むものだった。

「やれやれ…世話を焼かせるなよ」

岸辺から飛び退く男に対し、異形は川の中から出てきた。

顔だけではない。

銀色を基調とした姿は、まるで昆虫人間とでもいうべき異形だった。

近未来より呼び寄せられたミュータント。

外宇宙より襲来したエイリアン。

そんな空想さえしてしまいそうなほどの、理解の範疇を超えた姿形。

一言で言うなら。

「ば、化け物…」

ガチガチと奥歯を鳴らしながら、男は呟く。

「心外だな」

銀色の異形は返した。

「テロ用改造人間『metamorphosis human』、略称『MH』。それが正式名称だ。覚えていてくれ」