6月。
俺のクラスに新しく転校生が来た。
……俺にとっては、知らない奴が増えるか、殴る奴が増えるかってだけの話だけど。
時期外れとかどうだって良い。


「神奈川県から来ました、倉田雪(クラタ ユキ)って云います。東京は近いけど殆ど来た事が無いんで、分かんない事だらけです。宜しくお願いします。」


教卓の横で挨拶する色白の男――倉田雪は、男にしてはやけに細くて小さかった。
あんな色白じゃぁ、殆ど喧嘩した事は無いだろーな。女みてぇーな名前だし。


「じゃあ、倉田君の席は……。米本の左側の席が空いてるから、そこに座って下さい」


ってか、神奈川県じゃ隣りの県じゃん。殆ど来た事無いってどういう事?
下手すりゃ学区外通学も許されそうな近さじゃん。
……あーそうか。箱根とかじゃ通学は厳しいよな。



俺は一人ごちてたから、先公が言ってためんどくさい話なんて聞いてなかった。
転校生――倉田が俺の席の方に歩いてきていて、周りの奴らが不安そうにそれを見ていた。

俺は倉田が歩いてくるのを、口をポカンと開けて眺めていた。
倉田は俺の隣りの空席に座ると、笑顔で俺を見て言った。


「米本君だっけ? 宜しくね」


…………うーわ、面倒な事になったなぁ。





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