…って、ちょっと待って。


「…ない」



ない、ない、ない。


ずっと鞄の中を行き来していたあたしの手が止まった。



「何が?」


「…お弁当」


「え、忘れたの?」



その時、朝、食パンをくわえながらリビングを走り回っていたあたしの視界の片隅にお弁当があったのを思い出した。



「…テーブルに置きっぱなしかも」


「え〜」


「ごめん梓っ。購買行ってパン買ってくる!先食べてて!」


「りょうかーい。早くしてよねー?」