そして優しい~番外編~


何故、章弘が?

章弘は言いたい事は全て言ったのか、満足気な笑みを浮かべて俺を見ると、この場を去って行った。



俺が章弘の後ろ姿を見送っていると、美雪が動いた気配がして、美雪の方を見た。

すると、さっきの場所から動かないまましゃがみ込んで、顔を見られないように膝に埋もれさせていた。



美雪……。



俺は美雪に近付いた。

時折揺れる肩。

何があったんだ?



美雪の目の前に辿り着き、声を掛けようとしたら……。



「……章弘先輩……」



ズキン!

他の男の名前を呼ぶ美雪の声を聞いて、胸に痛みが走った。