「美雪……おまえ……」
俺は言葉を続けたかったけど、言葉に詰まってしまった。
そうだった。
美雪と僚二が付き合うきっかけは、美雪が義理チョコを渡そうとしたら、僚二が『義理チョコは受け取らない。本命チョコなら受け取るけど、どっち?』って言ったのが始まりだ。
美雪にとって、僚二との思い出で……バレンタインは、特別だったんだ。
「だってそうでしょ? 僚二が言ったんだよ? 『義理チョコは受け取らない』って。なら、もうあげられないよ……」
美雪は、さっきまでの弱々しい声とは違い、堰を切ったように早口で言った。
そして。
「今の私には、涼が居るもん。僚二が『一番』じゃないんだもん」
俺の目をしっかり見て、美雪が言った言葉に、何故か胸がチクリと痛んだ。

