「今年は、ちゃんと挨拶しようと思ったの」
美雪はそう続けて言った。
でも、その後、キュッと下唇を噛んで、黙ってしまった。
その表情は、次の言葉を考えていると言うより、込み上げてくる涙を堪えているように見えた。
なんで今年は挨拶しようと思ったのか……その心境の変化は、きっと俺達の出会いが原因だろう。
だけど、それとバレンタインと、これ程美雪が動揺している理由が結び付かなかった。
しばらくすると、美雪は落ち着いたのか、微かに頷いて言った。
「僚二より大切な人が出来たから、来年からは僚二へのチョコは止める……きちんと、そう言いたかったの」
その言葉で、美雪の涙の理由が分かった。

