ココアにして正解だったのか、1口飲んだ美雪の表情は、少し和らいだような気がした。
それでも、頬には間違いなく、さっきまで泣いていた証が残っている。
「で?」
俺はそう訊きながら、右手を伸ばし、指でその涙の跡を消した。
「何があった? 相談したい事、って?」
俺の問いに、ちょっとだけ顔を上げ掛けたけど、美雪はすぐに自分のコーヒーカップに視線を落とした。
その表情は、決して俺の言葉を無視している訳ではなく、なんて話したらいいのか迷っているような感じだった。
『相談したい事』と美雪自身が言う位だから、話してくれるまで待とうと思った。

