美雪はすぐには振り向かなかった。 なぁ、美雪? 頼むから、俺の居ない所で、一人で泣くなよ……抱き締めてあげられないだろ? 俺の心の声が聞こえたのか、美雪はゆっくり振り返った。 「……涼……」 涙で頬を濡らしているけど、そう俺を呼んだ表情は、まるで迷子の小さな子供が母親を見つけた時の安堵の表情に見えた。 俺は何も言わずに美雪の傍に行き、ポンポンと軽く頭を撫で、カバンを部屋に置いた。