「あのね、美夜(みや)が何かなくしちゃったらしいの」

「鈴(りん)ちゃん、探してあげてくれない?」

簡単にしゃべりやがって…! 

当事者であるわたしの意見を聞かんかい!

「まあ、そうだったの。良いわ、占ってあげる」

また彼女も上から目線で話を進める。

だからわたしは少し声を荒らげて、はっきりと言った。

「それはいいわ。自分で探すから」

「えっ?」

途端に教室中の空気が凍り付く。

『魔女』の申し出を断るなんて…と雰囲気が語っているが、わたしは真っ直ぐに彼女の眼を見つめる。

「あなたの手を煩わせるほどのことじゃないわ。だからほっといて」

「そっ…そう。分かったわ…」

言葉ではそう言ったものの、その表情は醜く歪んでいる。

まさか自分が差し出した手を、振り払われるとは思わなかったんだろう。

屈辱と怒りの感情が、そのまま顔に出ていた。

「ちょっと、美夜! 何で断ったのよ!」

「『魔女』に逆らうと、後でヒドイ眼に合うのよ?」

クラスメート達は心配そうな表情を浮かべながら、小声で怒鳴る。