視線を向けた先に、『魔女』はいた。

くしくもわたしは『魔女』と同じ、2年D組だ。

しかしその呼び名には相応しくなく、彼女は地味で落ち着いた雰囲気を持っている。

『魔女』と呼ばれるまでは、大人しく自分の席で読書ばかりをしていた。

特に目立つこともせず、教室の中の風景の一部と化した日々を送っていた。

けれどある日、携帯電話を学校でなくしたクラスメートに、彼女が占いをしてあげた。

すると言った場所で、携帯電話は見つかったらしい。

それ以来、彼女は『魔女』と呼ばれ、あらゆる方面で助けを求められる存在となった。

―しかしさっき聞いた通り、自分の存在を否定する者には大変厳しいとか。

もちろん、彼女自身がそういう災いを起こしたなどと、口に出してはいない。

けれどそういうふうを装うから、噂が広まるんだ。

ふとわたしの視線に気付いたのか、彼女はこっちを見る。

「どうしたの? 何か困り事?」

彼女は得意げな表情で、こっちに歩いてくる。

『魔女』と呼ばれることに強い優越感と自信を兼ね備えた笑みは、見ていてあまり気持ちの良いものじゃない。