「……そういうふうにしたのは、あなたでしょう?」

嫌悪もあらわに言うが、電話の向こうの相手は相変わらずの軽い調子のまま。

『だって私はお前の姿を愛しているから。だからこそ時を止め、守る術をかけたと言うのに…。私の愛を理解してくれないなんて、師匠として悲しいよ』

中身ではなく、外見のみとハッキリと言うのだから、男としても最低なヤツだ。

「…ああ、そうですか。とにかくわたしはもう二度と、師匠と会うつもりはありませんので。お元気で」

そして通話を切った。

これ以上話していると、こっちが精神的にダメージを食らうだけで損だ。

「さて、と…」

どうやら師匠に居場所がバレているようだし、もうここにはいられないな。

「やれやれ。いつまでこの逃亡劇は続くんだか…」

けれどどこに逃げてもきっと、師匠はわたしを見つけるのだろう。

そして彼女のような『魔女』か『魔術師』を作り出すのかもしれない。

それが分かっていて、わたしは人間の中に逃げ込むのだから……。

「性格の悪さは、師匠譲り、か…」

強い雨が降り続く中、わたしは苦笑した。



【終わり】