桜星サンセット

昔ながらの商店街の真ん中でふいに自転車が止まった。

「着いたよ。ここ」

アンが指さしたのは古い美容院だった。

ここが?アンの?

アンの家って豪邸だって勝手に想像していた。

アンはお金持ちのお嬢様で、真っ白の大きなお屋敷で、大きな犬とかいて、本物のメイドさんとかいたりして、って思ってたから。

アンは自転車を止めるとその美容院の入り口に手を掛けた。

カランコロンとドアの上についたベルが軽快な音を鳴らす。

「入ってコウ。ただいまー、ママ」

やっぱりアンの家なんだ。

「ママ、コウだよ」

ドアを入ったところで突っ立っている私をアンのお母さんに紹介した。

「あ、は、はじめまして。青木康子です。よろしくお願いします」

緊張しながら何か言ってくれるのを待ったが、アンのお母さんは何も言わず私を見つめていた。

全身をにらみつけるようにじっと。

なんか、怖い。

私変な事言った?