桜星サンセット

クローゼットの奥のダンボールから一冊のスケッチブックを引っ張り出した。

中学の頃、勉強も運動も大嫌いだったけど、美術の時間だけは大好きだった。

つい半年前まで使っていたスケッチブックがもう懐かしく感じる。

1枚づつページをめくる。

授業で書いた静物画や自画像、自由課題の絵は5パターンも描いていた。

加藤先輩の、

「アート系」

の言葉がずっと引っかかっていた。

ノリで言った何でもない言葉だったけど、そこに微かな光が一瞬射した。

将来や夢といわれるものがぼんやりと遠くに見えた気がした。

それは具体的なものではないし、加藤先輩みたいな絵が自分に描けるとは思わないけれど、ただ描きたいと思った。

出しっぱなしになっていた鉛筆を握り、空いたページに描き始めた。

夢中で鉛筆を走らせ、出来上がる頃には夜が明け始めていた。