「ありがとう。これがないと、家に入れないから助かった」



「…いえ、間に合って良かったです…」



頭を下げ、戻りは走らず、歩いてお店へ。

手を洗い、上手く笑えず作り笑顔でレジをする。

発注と精算の為に来た店長が、「今日の雰囲気、怖いよね?」と、芽に小声で話してる。

芽は「仕方ない事なの!」と、注意して、レジコーナーから追い出した。

いつもの私に、戻らないと。

悲しみを我慢するなんて、昔から得意な事だ。

だから、問題はない。

アレは、気の迷い。

そう自分に言い聞かせ、5時間の勤務を終わらせた。