LOVE OF DISTINY〜最低で構わないから〜【完】

水切りに取り掛かるまで20分。

モップより、水切りがまた大変。

縦に下ろし、横にやり。

隅に残る水気を雑巾で拭い、1枚に5〜6分を掛ける。



「海斗?お疲れ様」



全面を終え、冬なのにじんわりとかいた汗を拭ってると、成美が現れた。

ユニフォームの上にジャンパーを羽織り、俺のコートとマフラーを手にして居た。



「寒いだろうに、何してるんだよ?」



成美は自分のマフラーをロッカーに置いて来たらしく、俺のを首に巻いてやると、嬉しそうに口元を緩めた。



「海斗の匂い…大好きっ」



“匂い”だと言ってるのに、自分が好きだと言われたような錯覚で、抱き締めたい衝動に駆られる。