髪を乾かしてくれたとき。 河原で最後に手を握ってくれたとき。 こんなに温かくて、優しい手があることを知りました。 魔法の手。 ――きっとあのときの俺は、彼女よりずっと子供で。 彼女は、俺が思っていたよりは遥かに大人だったのでしょう。 年月はさらさらと流れて、 あの季節を何度も巡り、 俺は、あの頃恋していた彼女と同じぐらいの歳になりました。 勤務先で出会った賢くて優しい女性と結婚して、 娘が生まれました。 …つくづく、母親というものはすごいです。