『良い天気だなぁ』

雲一つない春の青い空に、ポツリと呟く。
只今お昼休み。
立ち入り禁止である屋上に私は一人寝転がっていた。
え、鍵ですか?ちゃんと掛かってましたよ。
意外とすんなり開けちゃいましたけど…。

『ふぁぁ…。眠い』

うーんと背伸びをすれば、仕舞っていたはずの耳と尾が無意識に出てしまった。
…耳と尾って何かって?言葉通りですよ。
スカートの下からフサリと顔を覗かせる真っ白な尾は、私の気持ちを表わすようにゆらゆらと揺れた。


――――…そう、私は妖怪だ。

まぁ妖怪と言っても半分で、もう半分は人なんですけどね。
父が妖狐で母が人で巫女さん。因みに兄妹は妹と弟が一人ずつ。
とりあえず、家族の話はまたあとで。
問題が起こったのは、この次からだ。

『綺麗な空…カメラ持ってくればよかったなぁ』

吸い込まれそうな透明の青。
こうしてみると、海の中にいるみたいだ。
こんな海の中を泳げたら、気持ちいいだろうな…

あぁ、眠い…。

コロリと出入り口の方へ寝返りを打てば、そこに人が立っていた。



…ん?立っていた?

ゆっくり起き上がり、その人の方を見た。

あれ、なんで人が屋上に?
鍵、掛かってたはず…。
…まさか、私…鍵掛け忘れてた…?

『あの…。』
「鍵、空いてましたよ」

…やっぱりぃぃっ!!
どうしよ、これ完璧に見られたよね?

『えっと…。し、正体ばらしたら呪いますよ!』
「…誰にも言われたくなかったら、チロル奢れ」

…逆に脅迫されたっ!?