――翌月頭。


自宅にアニメ・声優雑誌の束が送られてきた。

いずれも実際の発売までには数日間ある、関係者にしか配られない見本誌というやつだ。


内1冊を手に取り、該当ページを見つけたとたん思わず吹き出してしまった。


メイクもネイルも(!)ばっちり決めて、ところどころに鮮やかな紅が映える黒ずくめの衣装――どこからみても紛うことなく“ビジュアル系”――普段の桐原さんとのギャップが激しすぎる。


なのに、高身長で手足が長いためかなり様になっているのがどことなく可笑しいのだ。


ポーズに一切照れがなく、堂々としているのはやはり役者というべきところなのだろう。



そして。


ページの隅では“スタイリスト:柏木翔”の文字とお世話になったお店の名前がしっかりと紹介されていた。


礼節とか恩義といった部分を欠かさない桐原さんの姿勢に、人柄がにじみ出ているなと思った。


(そういうところがちゃんと、誌面から伝わればいいのに――)



後日、雑誌の発売と同時に、事態は思いもよらない方向に好転し、同時に騒動の収束を迎えた。



桐原さんのその声優らしからぬビジュアルがサブカル層に“ウケた”のである。