「周の台詞――ですよね?」


高鳴る興奮を抑え気味に問いかけると、ふと息をついた桐原さんが照れた顔で振り向いた。


「ちゃんと、小学生っぽく聞こえました?」


ぶんぶんと子供のように首を縦に振った。


だって本当に見事な、普段の声質とは異なる“少年”の声がに現れたのだ。


私のちっぽけな心配なんて、一瞬で吹き飛んでしまうくらいの、プロの技がそこにはあった。


私の様子に、桐原さんは胸をなで下ろしたようだった。



「よかった。オーディションでもいろんな人から良かったって言ってもらえたけど、不安なこともあって」


振り向きざまに私の右手を取ると、ぐっと力を込めた。



「お互い色々大変なこともありますけど、頑張りましょうね!」



「は……はい……」


桐原さんの勢いに気圧されながら、


(やっぱり素の声もいいなぁ。この励ましの台詞、録音させてもらえたら仕事もっと頑張れるのに……)


と考えてしまう自分はやはりどうしようもない声ヲタなのだった。