レギュラーが決まって忙しいはずのに、バイトを続けている――というのは多少気になる。

しかしそのおかげで、タイミングさえ合えば、彼の様子を遠くから伺い知ることは出来そうだ。



(よし!そうと決まったらちゃっちゃと仕事終わらせるぞー!!)


早速、先ほどの部内会議の議事録をまとめる作業に入った。





ところが。


(――はぁ……この時期は無理だわ)


1つの仕事を終わらせても、その間に2・3の仕事が増えている。

やることが山ほどあるので、低い方に水が流れるごとく、手が空いた者にはどんどん仕事が回ってくるのだ。


とても一人仕事を早めに切り上げて帰れるような雰囲気ではない。



結局、仕事の目処がついたのは22時だった。


それでも諦めきれず、タクシーを拾って居酒屋を覗きに行った。


しかし桐原さんの姿はなく、空振りに終わった。



その日から、残業のあと居酒屋に立ち寄る行為を続けたが、一度も桐原さんの姿を見ることは叶わなかった。



(……やっぱりバイト辞めたのかな……)