(“ネットなんてろくなもんじゃない”――)



桐原さんの言葉が脳裏によみがえる。


身分を明かして人前に立つということ――それだけで多大なリスクを背負うものなのだ。


あらゆる批判、誹謗中傷――特に顔の見えないネットの世界では、悪意を持ったユーザーの手によって、論調が悪い方向へ流されることも多い。


知識として知っているつもりではいても、こうして直接矢面に立たされてみると、彼のいる世界の怖さがよく分かった。


そんな恐怖に晒されながらも、何故彼は“演じる”ことを選び続けているのだろう?


(「レギュラー、決まりました」)


これだけは直接私に伝えたいと言ってくれた彼の表情は、とても誇らしげで。


(「おめでとうございます!」)


私も心から彼に祝福の言葉を投げかけた。


何より、毎週彼の声が聴けることを単純に嬉しいと思った。



彼にもこの騒動の内容は知らされているのだろうか。


どんな気持ちでそれを受け止めているのだろうか。


声優の道を選んだことを、後悔しているかもしれない――。